♡♡二階堂サイド♡♡
校門へ続く桜並木。
毎年の光景だけど、今年の桜はやけに鮮やかに見えた。
その下で、足を止めている一人の女の子。
ふわりと広がった花びらの中に、彼女だけが取り残されたみたいで。
そっと桜に手を伸ばそうとする仕草も、舞い散る桜に見惚れている顔も――不思議と目が離せなかった。
気がついたら声をかけていた。
「ちょっと待って」
振り返った彼女の髪に、一枚の花びらが。
思わず指先でそっと摘み取った。
「はい」
渡すだけのつもりだった。
けれど、近くで見た瞳は思っていた以上に澄んでいて、心臓が小さく跳ねた。
「あ、ありがとう……」
照れくさそうに微笑む顔に、心をギュッと掴まれた。
俺は、その感情に気づかれたくなくて――口元をゆるめただけで、すぐに背を向けた。
「別に」
それ以上言ったら、何かが崩れそうで。
花びらを拾っただけ。
そんなふうに誤魔化すように、歩き出す。
背後でまだ立ち止まっている気配がしたけれど、振り返ることはなかった。
もしあのまま見ていたら、きっともっと……目が離せなくなる。
校門へ続く桜並木。
毎年の光景だけど、今年の桜はやけに鮮やかに見えた。
その下で、足を止めている一人の女の子。
ふわりと広がった花びらの中に、彼女だけが取り残されたみたいで。
そっと桜に手を伸ばそうとする仕草も、舞い散る桜に見惚れている顔も――不思議と目が離せなかった。
気がついたら声をかけていた。
「ちょっと待って」
振り返った彼女の髪に、一枚の花びらが。
思わず指先でそっと摘み取った。
「はい」
渡すだけのつもりだった。
けれど、近くで見た瞳は思っていた以上に澄んでいて、心臓が小さく跳ねた。
「あ、ありがとう……」
照れくさそうに微笑む顔に、心をギュッと掴まれた。
俺は、その感情に気づかれたくなくて――口元をゆるめただけで、すぐに背を向けた。
「別に」
それ以上言ったら、何かが崩れそうで。
花びらを拾っただけ。
そんなふうに誤魔化すように、歩き出す。
背後でまだ立ち止まっている気配がしたけれど、振り返ることはなかった。
もしあのまま見ていたら、きっともっと……目が離せなくなる。


