二階堂side

 窓際の席から、二人の様子が視界に入った。
 桜木が少し恥ずかしそうに「菖」と呼ぶのを見て、菖が満足そうに笑っている。

(……恥ずかしそうにするあの表情が、たまらなく愛おしい)

 その光景に胸の奥が、ほんの少しざわつく。
 桜木美桜。
 朝の桜並木で花びらを渡したあの子が、今こうして笑っている。

 なぜか目が離せなかった。
 けれど、自分でもその理由を深く考えるのはやめておいた。