お昼休みー

私は、菖さんに誘われて学校探検ツアーへでかけることになった。

「ここが音楽室。ピアノはね、歴史的にすごく古いらしいよ」
 菖さんが胸を張って説明する。

「菖さんって物知りなんですね。」
「……はいストップ!」
 急に菖さんが私の前に立ちはだかった。

「えっ?」
「美桜?さっきから“さん”付けと敬語ばっかりじゃん。同い年なのに距離ある感じ!」
「で、でも……」

 菖さんがにこっと笑う。
「せっかくこうして出会って友達になれたんだもん、菖って呼んでほしいな。」

「菖……」
 口にした瞬間、少し照れくさくてお互い笑ってしまった。
「うん、それそれ!よし、これで正式に友達ね!」

 差し出された手を思わず握り返した。
 温かい手……?
 菖のとびきりの笑顔がまぶしくて、胸の中がじんわりあたたかくなる。
 あんなに不安だった新しい街での生活が、菖のおかげで彩りを放ち始めた気がした。