テンプレートみたいなやりとりを繰り返している。入社当時から。
同期で気が合った。実はインドアなところ。読書と映画が好きなところ。休日はなるべく寝ていたいところ。家事は溜めておくタイプだが、ある日突然謎のやる気が出るところ。そして疲れ果ててまた寝るところまで。

「見る?
こないだ羽田でゲットした戦利品」
「見せて」
黒いビジネスバッグから取り出されるデニム地の大きなポーチ。リラックスした白いクマのキャラクターがさりげなくあしらわれている。
私の誘いを断り羽田までの電車の旅を楽しみ飛行機の離発着をのんびりと見学し、ついでにガシャポンを回してきたらしい。腹を立てるほどのことではないがいっしょに行きたかった。言わないけど。
空港はガシャポンの聖地だ。海外からのお客が帰国するとき、円の小銭をなくすべく、また、ただ楽しいからガシャポンを回す。需要と供給の理想的な形。

「また面妖なものを集めたね」
「ガシャポンに入ってるってだけでとても魅力的に見える。
要る?」
「うん」
「結婚してくれないか」
「断る」