それから少し経ち、とうとう新人歓迎会の日になった。
たくさんの新人社員たちがテーブルを囲み、テーブルの上にはお酒がいっぱい並んでいる。
「お酒…。」
前にも話したが私の父親にはDV癖があった。
しかもそれはお酒を飲んだ時にだけ発揮される悪癖だ。
そしてその結末は肝臓ガンで死去。
今考えてみても明らかに私の父親はアル中だったに違いなかった。
私はお酒の入った透明のグラスを見て息を呑む。
もしかしたら私にも父親譲りの悪癖付きアル中があるんじゃないか。
私は毎回、お酒の席でそんな心配をする。
それは飲みの相手が彼氏でも友達でもだ。
誰と飲んでいてもその心配はついてまわる。
その度にやはり私は父親との思い出に呪われているなと思った。
「はあ…。」
私が小さくため息をついた時、少し遠くから社長の声が聞こえた。
「じゃあ、私は明日早いのでこれで失礼します。」
社長がそう言うと新人社員たちが寂しそうな表情を浮かべる。
どうやら社長は早々に新人社員たちのハートを掴むことに成功しているようだった。
さすが社長だ。
ふと、私は入社式前の信号待ちの時に社長と出会ったことを思い出す。
あまり惚れっぽくない私も社長を1目見た時、やはり心にくるものがあった。
それはまるで心の扉の隙間に社長がスルリと入ってきたような感覚。
それが身体中を駆け巡り、胸の高鳴りが止まらなかったのだ。
社長は私が高校生の時から夢にでてきて何度も心の隙間に入ってきていた。
ただ、そういった過程があっても社長は私だけでなく、他の新人社員も虜にしている。
だからきっと社長は人たらしなんだと思う。
なんだかそう考えるとある図式が見えてくる。
カッコいいイケメン社長、高校生の時から夢で社長を見ていた私、会社に入ってから社長が気になりだした新人社員たち。
この図式が頭に思い浮かぶ度に思うことがある。
「私のほうがずっと前から社長を見つめていたのに!」
高校生の時から社長を夢で見つめ続けてきた。
だからこそ、この数日で社長を気になりだす新人社員たちのことが少し嫌だったりする。
だけどきっと社長は人たらしだから今までだってきっと数々の社員を虜にしてきたはずに違いない。
しかしながら私は社長への執着が強いようで、ずっと入社式の日からこう思っていた。
「私のほうが社長のことをずっと前から知っていたのに。」
グラスに入ったお酒は一向に減る様子がない。
これは父親からの呪いというより社長への執着に気をとられている結果でしかなかった。
恐ろしいことに社長の人たらしさは、お酒を飲むペースも制御してしまうらしい。
「ふう…。」
私がそうやって1息をついていると、とある女性が声をかけてきた。
「大丈夫ですか?さっき社長が心配してましたよ。」
なんとその女性は入社式前に喫茶店で見かけた桜の似合う美女だったのだ。
私は驚きながらもその美女に質問する。
「社長が心配?なにを心配してたんですか?」
「あまりお酒がすすんでないから体調を崩してるんじゃないかって心配されてましたよ。」
まさか社長が私のことを心配してくれているなんてこんなに嬉しいことはない。
私はさっきまで社長への執着心に囚われていたのに今は感激と嬉しさで胸がいっぱいだった。
その時、隣りにいたハーフ美女のミウナがいきなり立ち上がってこう言ったのだ。
「私のお姉ちゃん社長のお兄さんと付き合ってたんだよ!すごくない!?」
ミウナの突然の告白にあたりがザワッとする。
私も桜の似合う美女も驚いていた。
そしてミウナは相当、酔っているようだ。
すると桜の似合う美女はお酒をグイッと飲み込み、ミウナに負けじと立ち上がった。
「実は私の姉も社長のお兄さんと付き合ってたんです。しかも2年半。こっちの方がすごくないですか?」
その告白にさらに周りはざわつく。
そして社長の兄がすごくモテるという事実に話しは持ちきりとなった。
正直、後半の飲み会は社長のお兄さんの話で盛り上がった記憶しかない。
きっと美女と複数人付き合えるくらいだから社長のお兄さんは相当、イケメンで人たらしなのだろう。
私も他の新人社員たちと同様に社長のお兄さんのことに興味津々だった。
しかしながら社長のお兄さんはなぜ会社を継がなかったのだろう。
その疑問だけが飲み会が終わったあともずっと私の胸に残っていた。
たくさんの新人社員たちがテーブルを囲み、テーブルの上にはお酒がいっぱい並んでいる。
「お酒…。」
前にも話したが私の父親にはDV癖があった。
しかもそれはお酒を飲んだ時にだけ発揮される悪癖だ。
そしてその結末は肝臓ガンで死去。
今考えてみても明らかに私の父親はアル中だったに違いなかった。
私はお酒の入った透明のグラスを見て息を呑む。
もしかしたら私にも父親譲りの悪癖付きアル中があるんじゃないか。
私は毎回、お酒の席でそんな心配をする。
それは飲みの相手が彼氏でも友達でもだ。
誰と飲んでいてもその心配はついてまわる。
その度にやはり私は父親との思い出に呪われているなと思った。
「はあ…。」
私が小さくため息をついた時、少し遠くから社長の声が聞こえた。
「じゃあ、私は明日早いのでこれで失礼します。」
社長がそう言うと新人社員たちが寂しそうな表情を浮かべる。
どうやら社長は早々に新人社員たちのハートを掴むことに成功しているようだった。
さすが社長だ。
ふと、私は入社式前の信号待ちの時に社長と出会ったことを思い出す。
あまり惚れっぽくない私も社長を1目見た時、やはり心にくるものがあった。
それはまるで心の扉の隙間に社長がスルリと入ってきたような感覚。
それが身体中を駆け巡り、胸の高鳴りが止まらなかったのだ。
社長は私が高校生の時から夢にでてきて何度も心の隙間に入ってきていた。
ただ、そういった過程があっても社長は私だけでなく、他の新人社員も虜にしている。
だからきっと社長は人たらしなんだと思う。
なんだかそう考えるとある図式が見えてくる。
カッコいいイケメン社長、高校生の時から夢で社長を見ていた私、会社に入ってから社長が気になりだした新人社員たち。
この図式が頭に思い浮かぶ度に思うことがある。
「私のほうがずっと前から社長を見つめていたのに!」
高校生の時から社長を夢で見つめ続けてきた。
だからこそ、この数日で社長を気になりだす新人社員たちのことが少し嫌だったりする。
だけどきっと社長は人たらしだから今までだってきっと数々の社員を虜にしてきたはずに違いない。
しかしながら私は社長への執着が強いようで、ずっと入社式の日からこう思っていた。
「私のほうが社長のことをずっと前から知っていたのに。」
グラスに入ったお酒は一向に減る様子がない。
これは父親からの呪いというより社長への執着に気をとられている結果でしかなかった。
恐ろしいことに社長の人たらしさは、お酒を飲むペースも制御してしまうらしい。
「ふう…。」
私がそうやって1息をついていると、とある女性が声をかけてきた。
「大丈夫ですか?さっき社長が心配してましたよ。」
なんとその女性は入社式前に喫茶店で見かけた桜の似合う美女だったのだ。
私は驚きながらもその美女に質問する。
「社長が心配?なにを心配してたんですか?」
「あまりお酒がすすんでないから体調を崩してるんじゃないかって心配されてましたよ。」
まさか社長が私のことを心配してくれているなんてこんなに嬉しいことはない。
私はさっきまで社長への執着心に囚われていたのに今は感激と嬉しさで胸がいっぱいだった。
その時、隣りにいたハーフ美女のミウナがいきなり立ち上がってこう言ったのだ。
「私のお姉ちゃん社長のお兄さんと付き合ってたんだよ!すごくない!?」
ミウナの突然の告白にあたりがザワッとする。
私も桜の似合う美女も驚いていた。
そしてミウナは相当、酔っているようだ。
すると桜の似合う美女はお酒をグイッと飲み込み、ミウナに負けじと立ち上がった。
「実は私の姉も社長のお兄さんと付き合ってたんです。しかも2年半。こっちの方がすごくないですか?」
その告白にさらに周りはざわつく。
そして社長の兄がすごくモテるという事実に話しは持ちきりとなった。
正直、後半の飲み会は社長のお兄さんの話で盛り上がった記憶しかない。
きっと美女と複数人付き合えるくらいだから社長のお兄さんは相当、イケメンで人たらしなのだろう。
私も他の新人社員たちと同様に社長のお兄さんのことに興味津々だった。
しかしながら社長のお兄さんはなぜ会社を継がなかったのだろう。
その疑問だけが飲み会が終わったあともずっと私の胸に残っていた。

