凪野くんを落とせない

私はゆっくりと自分のクラスへ向かう


さっき昇降口で確認したところ私は1年C組らしい


なんと今年の1年C組にはイケメンがいるらしく、今日の入学式のために気合を入れてきたであろう女子たちが話していた


イケメンか〜


きっと私が少女漫画の主人公ならばイケメン君と今ここで運命的な出会いを果たすことだろう


だってこんなかわいいのに主人公にならないわけがないじゃん


でも私と少女漫画の主人公とでは大きな違いがある


そう、それは自分がかわいいか自覚しているところ


少女漫画の主人公はそれはもう私が猫かぶっている表の杏ちゃんの特徴通りである


天然、おっちょこちょい、優しい、抜けているけど多少頭がいい、そして何より自覚していないが顔が天才級にかわいい


これ大切だからもう一度言う


主人公に必要なのは顔が天才的にかわいいこと


これがそろっていないと少女漫画の主人公になどなれはしない


みなさんお分かりの通り私は絶対になれはしない


だって天然じゃないし、おっちょこちょいでもない、抜けてもいなくて、頭は多少どころかめちゃくちゃいい


当てはまる要素があるとしたら顔が天才級にかわいいってところだけ


あーあ


こりゃ少女漫画の主人公などなれりゃしないわ


そりゃ男子もこんな自己肯定感おばけ女子なんて嫌か


そんなことを考えていたらなんか悲しくなってきて廊下を一人トボトボと歩く


ドンっ


「うおっ」


「いでっ」


前を見てなかったせいか突然人とぶつかった


うわー最悪、本当にごめんなさい


って今の私の悲鳴キモくね?


もうちょっとかわいく悲鳴あげればよかったかも


「大丈夫ですか?」


のんきにそんなことを考えていると突然手を差し出される


「あ、すみません、大丈夫です。そちらこそ大丈夫ですか?……はえ、」


思わず声が出てしまった


だってだって私の前に立っている人すっごいイケメンなんだもん……!!


やばい、これは少女漫画の展開きたー?!


入学式でイケメンとぶつかるなんて少女漫画でしかありえないでしょ?!


これは相手に一目惚れされる王道パターンでは……!


コレは声をかけないと!!


「あの……!」


「あ、俺も大丈夫なんでそれじゃ」


「え、」


イケメン君はあっけなく少女漫画のモブキャラのように退場していく


え、まってまって


こんなにかわいい私をスルーしていくってどういうこと??


恋に落ちて顔が赤くなって慌てて退場するならまだわかる


なんの感情ももたずに退場ってどういうこと?!


信じられない!!


顔はイケメンのことを気遣うように後ろをチラチラ見て、心の中でイケメンくんに叫ぶ


おい、こっちを振り向け!


今の私めっちゃかわいいから見て損はないぞ!!


欲を言えば私がもう一度あんたの顔面拝みたいんだ!!


そんな声が届くわけもなく、イケメンくんは角を曲がり見えなくなってしまった


あぁ、やっぱり世の中自分の思い描いた通りいくことはないのかも


思いっきり自信を喪失し、結局イケメンくんにぶつかる前のようにトボトボと歩く


って、ダメダメ!!


これから行く教室で私の3年間のモテ度が決まる


私はクラスの陽キャグループに入りたい


そこでイケメンスパダリ彼氏を探してやる!