「 ー あ、雨だ 」
ポツリと静かな教室に落ちていった。
こぼれ落ちた俺の声は返されることも、拾われることもなく、誰もいない教室にスッと消えていった。
俺は雨が嫌いだ。
何となく憂鬱で気分が下る。
梅雨は特にジメジメしていて、暑い。
だけど今日は不思議だ。
相変わらずジメジメしているけど、憂鬱な気分にならない。
何でだろうと思いつつも、「 傘持ってたっけ? 」と独り言をこぼしながら、教室を出る。
シンと静まった廊下には雨の音だけが響く。
ふと、目にとまったのは扉が半開きになっている教室だ。
誰も居ないはずなのに何故か足が止まる。
耳を澄ますと雨の音に混じって、かすかに歌が聞こえた。
とても綺麗で澄んでいて、ものすごく小さな声だった。
誰だろうと教室を覗き込んでみると、とても綺麗な女の子が座っていた。
凛としていてまっすぐで、どこか寂しそうな表情をしていた。
俺はその時一目惚れをした。
驚くほどに。
その時、それが、その恋が、君とのすべての始まりだとは思いもしなかったのだった。


