綿谷くんとは初めて知り合ったはずなのに、どこか初めてじゃない気がして。 不思議と安心できるような、懐かしいような――そんな感覚に包まれる。 「次の項の係数が平方数でないときは、一次の項が異なるふたつの (一次式) への分解をーーー」 先生の声は遠く、黒板の文字もぼんやりとかすんでいく。 結局丸々1時間、授業に集中することなく、私は上の空のままだった。