常に持ち歩いているのか、手提げから小さなポーチを出して、絆創膏を取り出した。
口の傷に貼ったと思ったら、今度は膝の傷を手当てを始める。
「……慣れてるんだな」
「…慣れてるわけじゃないけど、私もケガした時に、お母さんがこうやって手当てしてくれるの」
きっと、華子は両親にすごく大事にされてきたのだろう。
それが少し、羨ましかった。
なぜか、視界がだんだんと揺れてきて……俺はこぼれそうになる何かを、必死にこらえた。
顔を上げた華子と目があって、華子は何かに気づいたのか少し目を見開いたけど、小さく笑って、再び俺の膝に視線を落とす。
「…あなたは、強いんだね」
「俺は…強くなんかない」
俺の声を聞きながら、華子は優しい声で言った。
「十分、強いよ。…嫌だって気持ちを、あなたなりに表現したんでしょう?それって、すごいことだと思うから。私はいつも自分の気持ちが言えなくて…だから、あなたの勇気はきっとすごいものだよ。あ、でも人を殴ったり蹴ったりするのは、ダメだからね?」
その言葉に、胸が温かくなる。


