「……え」
「お前の名前、だろ」
そんなに驚くことじゃないのに、なぜかそいつは目を見開いて、俺を見る。
そして、驚いた表情がどんどん変わってーー
俺に、初めての笑顔を見せた。
……まるで、花が咲いたような、とびきり甘い笑顔を。
「よかった、あなたは私の名前ちゃんと読んでくれて」
「……は?」
「…私の名前、"かこ"とも読むけど"ハナコ"とも読めるでしょう?この前ね、クラスで自己紹介があったの。それで私の好きなこと、読書って言ったら"暗い"って笑われちゃって…それから"ハナコ"って呼ばれるようになっちゃった」
なんだよそれ…
困ったように笑顔を浮かべる華子に、俺は馬鹿どもの顔を想像して、腹の中にムカムカとした感情が込み上げてきた。


