「別に…これくらい何にもねぇよ」


今だって十分痛みを感じているのに、そんなカッコ悪い姿を見せたくなくて、俺は強がるように言う。


と、その子は何かを思いついたように膝に乗せていた手提げから何かを取り出して、ブランコを立った。


そしてすぐ横にある水道で、それを濡らす。


子リスのようにちょこちょこと動き回る姿に、自然と口角があがる。


その子がこちらに近づいてくるのを確認した俺は、今まで通り平静を装おうと必死だった。


俺の前にしゃがんだその子と、向かい合わせで目が合う。


さっきまで泣きじゃくっていた瞳はまだ赤かったが、今はもう涙は浮かべていない。


「痛かったら、ごめんね」


少し遠慮がちに、濡れたハンカチで俺の傷を拭いていく。


今までで一番近い距離に、思わず心臓の音が聴かれてしまいそうだった。


俺は小さく息をのむ。