膝に手提げカバンを乗せて、ひとり泣きじゃくるそいつに、俺はゆっくりと近づく。
俺と同い年くらいだけど、見たことのない顔だ。
もしかしたらこの辺のやつじゃないのかもしれない。
ランドセルの肩かけを、ぎゅっとつかむ。
「…お前、何泣いてんの」
俺は少し緊張しながら、その子に声をかけた。
泣いていたせいで俺に気が付かなかったのか、その子はびくりと肩を震わせて、ゆっくりと顔を上げる。
「…っ!」
大きな瞳いっぱいに涙を溜めて、少し怯えるように、下から見上げるその仕草に、俺は思わず息を呑んだ。
そいつは何か困って泣いていたのだろうけど、俺は誰かの涙が、こんなにきれいなものなのかと、驚かされた。
……なんだよ、これ…


