結局1対3の喧嘩で無傷に終わることはなく、俺もあちこちにケガをつくるはめになった。


「って……」


喧嘩からの帰り道、俺は傷の痛さに思わず声を漏らした。


殴り返されたときに口の端を切ったのか、微かに血の味が口の中に広がる。


と、どこからか、声がした。


声というか、泣き声だ。


俺はさっきまで感じていた痛みを忘れたように、気がついたら、一直線にその声を探していた。


「ふえっ…お母さん…」


すぐ先の公園から、その泣き声は聞こえてくる。


俺は息を切らしながらその公園まで走ると、女の子がひとり、ブランコに座っていた。