「…あ、あのっ、それ図書館の本だから…」
「だから?」
中里さんは手にした本を面白そうにゆらゆらと揺らしている。
「那月、こわーい」
中里さんといつも一緒にいる女子がクスッと笑った。
「ハナコ、何か言ったらどう?ほんと、あんたみたいな根暗がいるせいで、教室の空気が重くなるんだよ」
冷たく言い放つ声に、胸がぎゅっと縮こまる。
言いたいことはある。図書館の本を粗末に扱わないでほしいって。
でも、喉の奥が固まって、声にならない。
――何で、私っていつもこうなんだろう。
ぎゅっとスカートの裾を握りしめたとき。
「あんたたち、何してんのよ」
怒った声がして、私はぱっと声のした方を見た。
腕を組んだ、親友の丹羽 日向(にわ ひなた)ちゃんがこっちをじっと見ている。


