母親がいないことは、よく同級生にもからかわれることがあった。


「お前んち、母親いないんだろ?お前、母親に捨てられたんじゃねえの?」


こいつらは、母親がいないことは知っていても、いなくなった理由までは知らない。


それでも、言われたことは本当だ。


「……黙れ……黙れ!」


それが悔しくてたまらなくて、俺はそいつらに食ってかかった。


今までで、一番の喧嘩だったかもしれない。


それでも、俺は無我夢中でそいつらを殴ったことは覚えている。