私に一歩近づいて、首を傾けたと思った次の瞬間ーーー


頬に優しく、やわらかな唇が触れた。


一瞬、時間が止まったみたいで、心臓の音だけがやけに大きく響く。


「っ……!」


思わずぎゅっと目をつむる私に、綿谷くんはどこか余裕がないような吐息をついて、私から離れる。


「…華子」


微かに、私の名前を呼んだ気がした。


そのまま、なんだか熱っぽい瞳で、私の唇を指先でそっと撫でる。


そして、今日見ていた中で1番優しい笑みを浮かべた。


「お詫びとお礼は、これでいい」