「あ、あの名前…まだ聞いてなかったと思って」 「……名前?」 痛みではなく、私の言葉に眉を動かした。 あ…余計なこと、聞いちゃったかな… "お前に教える理由はない"とか返されるかと思っていたけど… 「…綿谷 蓮(わたや れん)」 そんなことは私の勝手な想像で、結構すんなり教えてくれた。 「…綿谷くん、ですね」 綿谷くんは手当てされている腕を、じっと見つめている。 あまり口数は多くないみたい。 でも綿谷くんとの間にある沈黙は、なぜか、どこか落ち着いていられる。