「左手の傷…さっきできたものですよね…」
その男子は、私が指摘した腕を見た。
「…こんなの、なんともねえよ。これくらいなら、ケガのうちに入らない」
「…あ、で、でも血が出てるみたいだからちゃんと手当てしないと、もっとひどくなっちゃうかもしれないから…」
看護師をしているお母さんに、うるさいほど言われた言葉。
「お前、俺を心配してんのか?」
どこか試すように、小さく首を傾げるその仕草に、また心臓が鳴る。
「それは、もちろん…」
「…ふーん」
今度はどこか嬉しそうな表情に変わる。
クールで、ちょっと怖い雰囲気の人だと思ったけど、以外とそんなことない、のかな…?


