綿谷くんの言葉が、すごく嬉しい。
私も綿谷くんの好きなことを好きになりたい…そう思ったはいいけど、自分が綿谷くんの好きなものや苦手なものについて全然知らないことを今になって気づいた。
「その…私、綿谷くんの好きなこととか苦手なこととか、全然知れてないなって」
私の言葉に、綿谷くんの目元が優しげに緩んだ。
「なら、これから知っていけばいいだろ」
綿谷くんの心地いい声が、自然と空気に溶けていく。
その声を聞いているだけで、胸の奥がじんわりあたたかくなっていくのを感じた。
……なんでこんな気持ちになるんだろう。
綿谷くんの声を聞くたびに、胸の奥がくすぐったくなる。
何気ない仕草ひとつでも、目が離せなくて。
ただ話しているだけなのに、心臓がやけにうるさく感じる瞬間がある。
こんなの、今までなかった。
私は自分でもわけがわからなくて、でもその理由を考えるのが、少し怖かった。
「そろそろ帰るか」
「へ……あ、うん!」
この気持ちの正体がわからないまま、私は上の空のまま、返事をした。


