「……どうした?」


綿谷くんに顔を覗きこまれて、私ははっと顔を上げた。


「あ…その…昔のことを思い出して。小学校の頃、自己紹介で本を読むことが好きって言ったら、暗いって言われてしまったことがあって…」


苦笑いを浮かべながら私は言葉を続ける。


「昔のことですし、今は全然気にしてないけど…そんなこともあったなって、少し思い出して」


綿谷くんは、しばらく黙って私の顔を見つめていた。


そのまっすぐな視線に、思わず息をのむ。


「誰かに何を言われたとしても、華子は華子でいればいい。お前が好きなものは俺も知りたいし、俺も好きになりたい」


その真剣な声に、心臓がどくんと鳴る。



ドキドキと、心臓の音が、ものすごく響いてくる。