「風邪、ちゃんと治ったみたいで良かったです」


「お前おかげでこの通り。あれからちゃんとお前に礼言えてなかったし…まじ、サンキューな」


ポン、と頭に優しく手を乗せられて、私は思わず視線を下に向けた。


「い、いえっ…」


頬に集まる熱を綿谷くんにバレないようにするのが、精一杯。


「ふーん、お前ってこういう本好きなんだ」


そんな綿谷くんはさっきまで私が読んでいた本に興味を示したのか、それを手に取ってパラパラとページをめくりはじめた。


「わ、綿谷くんは普段本とか読んだりしないんですか?」


「まあな。特にこういう小説とかは」


「そうですか…」




『趣味が読書とか、暗っ!』


ふと、昔言われた言葉を思い出した。