「……ん…」
頬にかかった髪を、誰かが優しく退けてくれるような感覚に、私はゆっくりとまぶたを開けた。
相変わらず図書館は静寂に包まれていて、いるのは自分だけのはずーーだったのに。
だんだんと鮮明になる視界の中に、誰かの姿が見えて、私は何度も瞬きをした。
そして、はっとして体を起こす。
すぐ隣の椅子に、綿谷くんが座っていた。
机に片肘をついて、穏やかな目でこちらを見ている。
「わ、綿谷くん!? あ、あれ、私いつの間に寝て……」
少し休むつもりが、どうやら寝てしまっていたらしい。
慌てて辺りをキョロキョロと見回してから、もう一度彼の方を見る。
「き、来てたなら起こしてください!」
ちょっと怒ってみせたのに、綿谷くんはふっと笑った。
「悪い。お前の寝顔見るのに夢中で起こすの忘れてた」


