放課後。


帰りのホームルームが終わって、教科書をカバンにしまっている時だった。


「ハーナコ」


中里さんの声がして、心臓に冷たい何かが走る。


「……な、何?」


視線を上げると、なにやら不敵な笑みを浮かべている中里さんと、目が合った。


と、ドサッと鈍く、重そうな音を立てたプリントの束を、私の机の上に放るように置く中里さん。


「これさ、岡島に頼まれたんだけどー、あたしこれから美容院行かなきゃいけないんだよねー」


今日日直だった中里さんが、担任の岡島先生にこの資料を準備室に運ぶように言われていたのを、さっき私も聞いていた。


中里さんは、先生の前ではいい子を演じるのがうまい。
だから、頼まれた仕事を、こうやって私に押し付けるなんて、先生も予想できないだろう。