「この本返して欲しけりゃ、放課後3階の空き教室来なさいよ。来なかったら、どうなるかわかるよね」
誰にも聞こえないように、耳元でそう囁く。
今までにないくらい低い声に、私は小さく息を飲んだ。
…なんだろう。
嫌な予感しかしない。
「返事くらいしろよ。わかったか、って聞いてんだけど」
苛立ちを含んだ声で、中里さんが舌打ちをした。
「……わ、わかった」
そう答えると、中里さんはいつも友達と話している時の明るい表情に戻った。
「じゃ、よろしくねー」
肩をポンと叩かれて、中里さんが去っていく。
私は震える指先を抑えるので、必死だった。


