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次の日の朝。


「やっほー、ハナコー」


教科書を整理していた私の席に、中里さんが近づいてきた。


中里さんが昔から怖い私は、顔をあげて、中里さんの顔を正面から見ることができない。


「……お、おはよう」


「相変わらず声ちっさ。何言ってんのか聞こえねーよ」


昔言われたことを思い出して、心臓がぎゅっと痛くなる。


私のことが嫌いなら、放っておいてくれればいいのに……


心の中ではそう言えるのに、いざ言葉にできない自分にも腹が立って仕方がない。


「そうそう、ハナコさー」


中里さんは私の机に置いてあった図書館の本を、手にとって、私の前にちらつかせる。