「………華子?」


綿谷くんの声に顔をあげると、視線がぶつかった。


……私、何してるんだろう。


……なんでさっき、すぐに綿谷くんを振り解けなかったんだろう。


わからない感情が、頭の中をぐるぐるして、キャパオーバーを起こしそう。


……わからない。
自分の感情が、自分でもわからない。



それに、綿谷くんのことは、もっとわからない。


…なんでこんな風に触れてくるの?


「…華子」


手を掴まれそうになって、私は思わず一歩後ろに下がった。



「わ、私用事を思い出したから、今日は帰ります!」


そう言って、逃げるように教室を飛び出していく。





誰かに見られてたら、まずいことになっちゃうから、これでいい。


そう思おうとすればするほど、心が苦しくなるだけだった。