翌日、家中に鳴り響く母の声と共に瞼はゆっくりと現実に戻る。階段を降りるといつも通りの怯えた笑顔でこちらを見つめてくる母が目に入る。
「いと君、朝ごはん用意したから。先食べてて。」
そう言い、そっと座り食器の上を黙って見つめる。すりおろしハンバーグ。こんな生ゴミを朝から口に入れるのは胃が腐るだろう。と、思いつつ手は躊躇うことなくひざの上に置かれた。今のうちに燃えるゴミに捨てようと食器を手に持ち足音を鳴らすと母の視線が背中に火の跡をつけるのを感じ立ち止まる。
「ごめんね。お母さん、ハンバーグしか作れないの」
その時、僕は罪悪感など気にしなかった。むしろ、時間を割いて料理をすること自体に嫌悪感を感じた。
「これからはもう作らなくていい。僕はゲロよりドロを食べる方がマシだ。」
僕は皿ごと生ゴミに。背を向け家の外に足を踏み出す。