Life Is a Flower

「もともと、母は真面目で聡明な人でした。だから、精神を蝕まれていく様子は見るに耐えなかったけれど⋯⋯やっぱり母は母のまま、最期まで聡明な人だったんだと思います」

彼は淡々と語るけれど、その瞳はとても深い悲しみを湛えていた。

いつかの、花屋でのやり取りを思い出す。

自分の身勝手な気持ちだけで、花束を渡す相手を聞き出し、その相手ことを、いま生きていて彼に愛されている人だと決めつけ、

「その人は幸せですね」

などと言った⋯⋯。

あの時の、彼の複雑な表情の意味が、今なら痛いほどに判る。

教会で自分の醜い感情を告白したところで、そんなことが一体何になるだろう?


「どうしたんです⋯⋯?」

彼に変だと思われても当然だ。

私には、今ここで涙を流す資格など何一つないのだから。

それなのに、どれほど必死で堪えても涙が止まらない⋯⋯。