仕事が終わり、帰る際に花束を抱えていた私に、

「あら?その花束、どうしたの?」

奥さんが聞くので、

「え?お客様から頂いて⋯⋯」

そう答えるしかなかった。

奥さんは少しニヤニヤして、

「美花ちゃん、やるわねー!どんなお客様なの?」

「えっと⋯⋯一言で言えば、爽やかな人⋯⋯ですかね」

「ふーん。うまくいくといいわね!」

うまくいくって⋯⋯?

だって、まだ二回しか会ったことがない、名前も知らない相手なのに、一体何を⋯⋯。

そうは言っても、帰り道、なんだかまだ夢でも見ているような気分だった。

確かに、なんだかロマンチックな展開と思えなくもない。

しかし、世の中そんなにうまくいく訳がないという気もしている。

夢と現実のギャップを行ったり来たりしたままだったが、ふと気付いた。

傘を返されたということは、もう二度と会えないのでは⋯⋯?