召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜

「グリフィス?」
「すみません。驚かせてしまいましたね。つい、足が…… 」
「足?」
「いえ、なんでもありません。それよりも、先ほどの話ですが、詳しく聞かせてもらっても構わないということですか?」
「え?」

 急になんで? あっ、もしかしてさっきの言葉を聞いたから? グリフィスはキッチンにいたし、私は手で口を隠しながら小声で言ったのに。あの距離から聞き取ったとでもいうの?

 しかし、それを口に出すことはできなかった。グリフィスが向かい側に、再び座ったからだ。

「帰り道も、ずっとそのような顔をしていたでしょう。けれど仕事のことだと思い、踏み込めなかったのですが……卑怯だというのなら」
「ち、違うの! 卑怯だといったのは……普段、やたらと構う癖に、いきなり距離を置かれたというか」

 何を口走っているのよ、私。まるで、恋人に放っておかれて寂しい女みたいじゃない。恋人どころか、偽装結婚をしている、まったく関係性のない女なのに。
 だけど言ってしまったものは、もう取り返せない。