召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜

「ありがとう」
「図書館の中も気をつけてください。アゼリアは――……」
「分かっているわ。ここの世界の人間じゃない私が病気に罹ったら、大変だものね」

 医者という問題もあるけれど、他の人たちとは違う出方をする場合があるからだ。たとえば、重症になったり、変なアレルギー反応が出たりしたら大騒動になってしまう。グリフィスはそれを言っているのだ。
 私の世話を甲斐甲斐しくするのも、また。この世界に慣れていない私に対する配慮だった。

 時々、やり過ぎかな、とは思うけど。それがまさに今だった。

 私はニコリと笑い、台所を出る。玄関へと続く廊下に響く足音は二つ。その音が聞こえた瞬間、私は後ろを振り返った。

「いつも言っているけど、見送りはいらないわよ。グリフィスだって、朝は忙しいでしょう?」
「アゼリアと違い、早く起きていますから大丈夫です。それよりも、こうしている間に遅刻しますよ」
「えっ!? 嘘っ!」
「本当です。さ、早く出勤してください。私も後片付けが残っていますので」

 だったら、見送らなくてもいいのに。