召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜

「美味しい……」
「それはどうも」

 言葉は素っ気なかったが、口調と表情でグリフィスが満足しているのが分かる。
 毎朝、母親のように私の世話をしてくれるが、グリフィスは私の母でもなければ、兄でもない。敬語を使っているが、私よりも年上。二歳違いだから、あまり変わらないんだけど、グリフィスは初めて会った時からずっとこうだった。

 一年前、突然この世界に飛ばされてきた私に対して、憶もせずに話しかけてきたグリフィス。その時から、今も変わらずにずっと。

「アゼリア? どうかしましたか?」
「え? なんでもない。今日もグリフィスは綺麗だなって思ったの」
「……私はアゼリアの黒髪の方が、綺麗だと思いますけど」

 それはつまり……髪以外は平凡だって言いたいのね。

 私はカップをテーブルの上に置き、ナプキンで口元を拭く。用意周到なグリフィスは、朝食の席にそんなものまで置いているのだ。

 身だしなみは大事だし、グリフィスの沽券にもかかわる。だから文句はないのだけど……。

「まだ外は寒いですから」

 すかさず鞄を手渡され、上着までかけてくれる。