召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜

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「アゼリア。どうしたの? そんなところで(うずくま)って。もしかして、具合でも悪いの?」

 この世界の図書館に勤め始めてから一カ月。私のいた世界とは違う書架の配置に慣れず、毎日のように館内を散策していた。
 その日も閑古鳥が鳴いていて、司書の仕事といっても、やることはほとんど掃除ばかりだった。利用者が少ない割に、建物は大きく。書架の数は……言わずもがな。清掃の者はいるものの、そこまで手が伸びないのが現状だった。
 だから普段、暇……ではなく手が空いている司書が、代わりにやっていた、というわけである。そこで私はある物を見つけてしまったのだ。

「ううん。ちょっとこんなのを見つけてしまって」
「どれどれ……」

 ヘルガが私の手元を覗き込む。青い髪がサラサラッとヘルガの肩から流れ、私が今閉じた本の表紙に軽く触れた。
 グリフィスの金髪も綺麗だけど、ヘルガの髪も美しい。表紙に掛かっても、全然嫌だとは感じなかった。むしろ、ラメの入った表紙の一部のように見えたほどだった。

「あら、これって占いの本じゃない。アゼリア、興味あるの?」
「興味というより、趣味でちょっと……」

 言い終えた瞬間、しまったと思った。図書館に勤務し始めてから一カ月。だいぶ馴染んだとはいえ、占いが趣味だなんて……一緒に住んでいるグリフィスにも言っていないことを口走ってしまった事実に、私は慌てた。