召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜

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 私がこの世界に来たのは、一年と二カ月。それなのに、初めてこの世界に降り立った場所を見ても、懐かしさを感じない。どちらかというと、こんな場所だったのか、と疑いたくなるほどだった。

「もっと広い場所だと思っていたわ」
「記憶が誤作動を起こすのも無理はないでしょう。何もかも知らない場所に来れば、意外と広く見えるものです」

 まるで、自分も体験したことがあるような口振りだった。グリフィスはいつも私に寄り添ってくれるけど、この発言ばかりは、そんな感じがした。

「もしかして、この間行った、遺跡のこと?」
「あぁ、さすがアゼリアですね。察しが良くて、一瞬、何を言われているのか戸惑ってしまいました」

 グリフィスはそういうと、芝生の上を歩き出した。

「実はウルリーケを封じてから、ジェマナキア遺跡に行ったのは、あの日が初めてだったんです。それまでは、やはり罪悪感からか、行く勇気が出ず。けれどアゼリアが行きたいのなら、と。すみません。あなたを口実にしてしまって」
「いいのよ。いつもお世話になっているから、私が少しでもグリフィスの役に立てていたと知って、そっちの方が嬉しかったわ」
「アゼリアが役に立てていなかったことなどありません。むしろ、私の方がずっと甘えていました」

 えっ、と驚いたせいか、急に立ち止まったグリフィスに反応できず、私はそのまま前に出てしまった。が、これ幸いと体を捻り、グリフィスの真ん前に立った。