コンクールに向けた練習が本格的に始まった。

桜田先生は、前の顧問だった崎原先生よりもずっと部活に顔を出してくれて、 毎日、私たちの音に耳を傾けてくれた。


「ホルン、今の音、もうちょっとロマンチックに」

「ユーフォ、低音の支えが安定してきたね」

一人ひとりに、丁寧にアドバイスをくれる。


その姿を見ているうちに、私は桜田先生に“憧れ”のような気持ちを抱くようになった。

教え方がすごく分かりやすくて、熱心で、優しくて。

しかも、かわいくて、おしゃれで…!

先生が部室に入ってくるだけで、空気が少し華やかになる気がした。


合奏の時間は、まるで魔法みたいだった。

先生の指揮は、テンポも表情も豊かで、

「今のとこ、もっと“キラッ”とさせて!」

「みんなで一つの楽器を吹くようにまとまりをつくる感じで!」

そんな言葉に、みんなが笑いながら音を合わせていく。


気づけば、練習の時間があっという間に過ぎていた。


「え、もう終わり?」

「今日、めっちゃ楽しかった」 そんな声が、部室のあちこちから聞こえてきた。

桜田先生との合奏は、ただの“練習”じゃなくて、 音楽の楽しさを学んでいるような時間だった。