ホルンの練習にも少しずつ慣れてきたころ。

芽衣歌ちゃんとは、同じ金管グループということもあって、自然と話すことが増えてきた。

ある日の帰り際、芽衣歌ちゃんが一緒に帰ろーって言ってくれて。

ずっと仲良くなりたいって思ってたからその言葉が嬉しくて、思わず笑顔になった。


その流れで、ふと口にした。

「ねえ、芽衣歌ちゃんってLINE持ってる?」

「うん、持ってるよ!」

「よかったら交換しよ?」

「うん、しよしよ!」


スマホを出して、QRコードを読み取る。

その瞬間、なんだか部活の“仲間”から“友達”になれた気がした。

その夜、芽衣歌ちゃんから「今日はおつかれさま〜」ってメッセージが届いた。

画面に浮かぶその文字が、なんだかすごく嬉しくて、私はすぐに「おつかれさま!これからよろしくね~」って返した。

ある日、わたしの親友、トランペットをしている詩妃(うたひ)が「夏休み、カラオケ行こうよ!」と提案してくれた。

もともと、私はトランペット第一希望で、詩妃もトランペットが第一希望だった。

楽器が決まった当初は、詩妃がトランペットになって少し、嫉妬していた。

けど、最近はホルンになったのはなんらかの運命!?

とでも思って、何とかやり過ごしていた。



「いいね!芽衣歌ちゃんも誘っていい?」

「もっちろん!!」

おっけをもらったので誘ってみると

「え!、行きたーーい!」

と芽衣歌ちゃんも即答してくれて、すぐに3人のグループができた。


グループ名は「金管三姉妹♡」

—ホルン、ユーフォニアム、トランペット。

それぞれ違う音だけど、なんだかバランスがいい気がした。

LINEでは、カラオケの話で盛り上がった。

「ねね、カラオケってどこにあるの?」

「点数対決しようよ!」

詩妃はノリノリで、楽しみにしてるのが伝わってきた。

夏休みの午後、駅前のカラオケ店に集合した私たち。

詩妃はトランペットのときと同じように元気いっぱいで、 私は、なんだか部活とは違う空気に、少しだけワクワクしていた。


受付を済ませて部屋に入ると、詩妃がすぐにリモコンを握って「
点数対決スタートね!」と宣言。

「え〜!緊張する〜!」と芽衣歌ちゃんも私もマイクを握った。


最初に歌ったのは詩妃。

アップテンポな曲を堂々と歌い上げて、なんと95点。

「強すぎ!」

「プロじゃん!」

芽衣歌ちゃんは、優しい声で歌ってて、めっちゃ可愛かった。

私は、こっそり練習していた曲を歌ってみたら、意外と高得点で「えっ、奏流ちゃんうまいじゃん!」と褒められて、ちょっと照れくさかった。


歌の合間には、学校の話や先生のちょっとした愚痴も飛び出した。

「体育の先生、まじで考え方古い〜(笑)」

「それな、あいつまじで昭和じじいやん!」

とか そんな話で笑い合って、気づけば3時間があっという間に過ぎていた。



夏休みが終わって、学校が始まった。

教室の空気は少しだけ重たくて、みんなまだ“休み気分”が抜けきっていない感じだった。

でも、私はちょっとだけ違っていた。

芽衣歌ちゃんと、詩妃と、あのカラオケの日があったから。

「また会える」って思えることが、なんだか嬉しかった。


部活も再開した。

久しぶりの音出しに、みんな少し緊張していたけど、みんなの音が重なった瞬間、夏の空気が戻ってきた気がした。

「久しぶり〜!」

「ホルン、ちゃんと鳴るかな…」

練習の合間には、ちょっとした相談も増えた。

「このフレーズ、どう吹いてる?」

「ここ、音程合ってるかな?」

部活の中で、芽衣歌ちゃんとのやりとりが自然になっていった。


教室でも、たまに「宿題ってなにがあったっけ?」とか話しかけてくれるようになった。

LINEでは、「明日、体育あるっけ?」とか、「今日の部活、何時まで?」みたいなやりとりが続いていた。


まだ完全に“親友”ってわけじゃない。

けど

吹奏楽の音が、少しずつ私たちの関係を深めてくれている気がして やっぱりすごいなって思った。