部活が始まりしばらくしたときも私はどこか心が晴れなかった。

みんなが楽しそうに練習しているのに、私は
「勝手に決まった」

「自分で選んだ楽器じゃない」

そこに自分の意思がなかった気がしていた。


でも、みら先輩が「この音、すごくきれいだったよ」と言ってくれた日。

あゆか先輩が「奏流ちゃんめっちゃよくなってる!」って笑ってくれた日。

その言葉が、少しずつ私の心をほどいていった。


ある日

先生から一年生はコンクールに出さないと言われた

正直ショックだった。

「やっぱり一年生は戦力じゃないんだ」って、悔しくて、悲しくて。

でもその夜、家で音を思い出していたら、ふと気づいた。

私、悔しいって思ってる

自分が吹奏楽に、はまっていっていることに気づかされた。

自分が希望した楽器じゃないけど、完全に吹奏楽にははまっていった。


それからは、褒められたい一心で本気になった。

音が少しでもきれいに鳴るように、口の形も、息の入れ方も、何度も鏡を見ながら練習した。

あゆか先輩に「今日の音、すごくよかったよ!」って言われた日は、心の中でガッツポーズした。


芽衣歌ちゃんとは、練習のたびに少しずつ仲良くなっていった。

「今日の先生、めっちゃ面白かった!」

「吹奏楽ってほんと肺活量いるよね」

そんな他愛ない会話が、どんどん心を近づけてくれた。

でも、クラスではなかなか話せなかった。

芽衣歌ちゃんは、別の小学校から来た子たちとよく話していて、私はその輪に入れなかった。

吹奏楽では仲良しなのに、教室ではちょっと距離がある。

その差が、少しだけ寂しかった。