本番は、クリスマスの日だった。

午前中の練習を終えた私たちは、一度家に戻って昼ご飯を食べ、それから会館へ向かった。

私が着いたときには、先生と美沙ちゃんがもう来ていた。

「こんにちは」と先生に声をかけて、「やっほー」と美沙ちゃんに手を振る。

残りの二人を待ちながら、少しずつ緊張が高まっていくのを感じた。


今回の会館は初めてで、チューニング室やリハーサル部屋の移動が大変だった。

チューニング室では、チューナーを使って必死に個人練習。

リハーサル部屋では、みんなが納得していない部分の確認をして、先生の話を聞いたあと、舞台裏へと移動した。

舞台裏では、前の学校の演奏がすごく上手く聞こえて、心がざわついた。

でも、先生が「頑張れ!」と声をかけてくれて、私たちはステージへと向かった。

アンコンは指揮者なし。

誰かの“ザッツ”から始まる。

私たちは、美沙ちゃんの方を見て、慎重に一音目を合わせた。


「ここは、ペットのメロディーを支えて」

「ここは、ボーンを引き立たせて」

「ユーフォとしっかり息を合わせて」

「ここは、私のメロディー。私の音を聞いてというように」

先生に言われたことを、ひとつひとつ思い出しながら吹いた。

一瞬、

「やばい、ここずれた。音外したかも」

と思ったけれど、 先生の

「演奏中は反省しない!」

という言葉を思い出して、気持ちを切り替えた。

6分ほどの曲は、本当にあっという間に終わった。

ステージを降りて戻ると、先生が

「よかったよ」

と言ってくれた。

みんなで

「楽しかったーー!」

と笑い合うと、先生も

「楽しめたなら、それが一番!」

と笑ってくれた。

家に帰ると、コンクールのときみたいに、私はずっとそわそわしていた。

「いけるかな…でも、あそこずれたしなぁ…」

そんなことを考えながら、待つこと30分。 Xに結果が出た。




銀賞だった。





「くやしい…がんばったのに…」

涙が頬を伝っていく。

やっぱり私は、涙もろい。

次の日、冬休みの部活。

朝9時、部員全員が集まった。

先生が言った。

「アンコンメンバーたちは、残念ながら銀賞でした」

「あー、そっかー」

みんながそう言って、静かに受け止めた。

そして、地区大会で終わってしまったから、冬休みの部活も、ここで終わりになった。