本番前日。
夕方、詩妃が私の家にやってきた。
「明日、アンコン頑張ってねーー!これ、お守りとして!!」
そう言って、手渡してくれたのは、ミサンガ。
くるくるっと編まれた、ピンクと黄色の可愛い色合い。
小さな袋の中には、手紙も入っていた。
「奏流へ。明日、アンコン頑張ってね!私は見に行けないけど、応援してるよーー!」
その言葉に、胸がじんわりと熱くなった。
私はすごく元気が出た。
そして、次の日。
私たちのグループは、朝早くに学校に集まった。
午後からの本番に向けて、最後の練習。
みんな、ワクワクしていて、でも少しだけ緊張もしていた。
桜田先生の最後の指導は、意外な言葉だった。
「みんな、演奏で失敗したとき、すぐ顔に出てるよ。
『あーー間違えたーー』
って。 でも、それが演奏にも出ちゃうから、反省は終わってから! 演奏中は、反省しない!!」
その言葉に、みんなが笑った。
でも、心の中では、すごく響いていた。
「演奏中は、反省しない」 それは、音楽に集中するための魔法の言葉だった。
ミサンガを足首に巻いて、私は深呼吸をした。
詩妃の気持ち、先生の言葉、仲間との時間。
私はステージに向かう準備をした。



