混みあう電車の中、コウちゃんはさりげなく周りから私を庇うようにしていてくれた。

ほんの1、2分の乗車時間でも、コウちゃんはいつもそうだ。


彼の部屋に着くや否や、電気もつけずに、狭い玄関で抱きすくめられた。

「コウちゃん?」

「あー⋯⋯なんか俺、めちゃくちゃカッコ悪いな⋯⋯」

「どうして?」

「平気な顔して、行っておいでなんて言ったけど⋯⋯本当は気が気じゃなかった。なるちゃんが裏切ることはあり得なくても、もし強引な相手に狙われたらどうしようかって、結局は駅まで様子見に行くとかさ⋯⋯。あまりにもカッコ悪すぎて」

私、コウちゃんのことをそれほど不安にさせていたのか⋯⋯。

こんなに長い付き合いなのに、何故、彼の本心に気づけなかったのだろう。

「ごめんね。私、やっぱり最初から断るべきだったって思ってるの」

「そうじゃないんだ。謝る必要ないよ」

「どういうこと?」