ある程度、館内を周り最後のコーナーにやってきた。

そこにはペンギン、カワウソ、アザラシ、亀がいる。

翔太は真っ先にペンギンの所へ向かう。
透明な水槽の中には大きい岩と陸がある。

1羽をら指さし翔太は笑う。


「あのペンギン美咲に似てねー?ちょっとませてる」


「ませてるってなによ、そんなこというならあのペンギンは翔太に似てるよ」


「なんだあのペンギン、いかにもバカですやんちゃですって顔してる!」


ふたりでケラケラと笑い。
時間はすぐに過ぎた。


イルカショーのある会場へ行くとちょうど始まる頃だった。
イルカの水槽から1番遠い席を選ぶ。
周りに人はいない。

「美咲、もっと前じゃなくてよかった?」


「大丈夫!翔太と2人きりで楽しみたいし」


「そっか」


優しい顔を見せる。

イルカショーが始まり、会場は賑わう。
イルカが輪をくぐったり、高く飛んだり踊ったり……


楽しい時間を過ごした。


イルカショーは終わり会場から人が去る。


「私たちも行こうか、お土産コーナー見て帰ろ!」


美咲は翔太の手を握ろうとしたが握れない。


「え?!」


見ると手が透けている。
もう一度、手を触ろうとするが透けてしまう。

触れない。

翔太から手を伸ばすが美咲の手は握れなかった。


「そんな、そんな……もうダメなの……?やだぁ……」

涙が止まらない。
美咲は何度も何度も手を握ろうとする。

翔太は美咲の目の前に両手を出す。


「仕方ない、あの世での約束だから。もう2日目の真ん中。消え始めても仕方ないよ…泣かないで美咲」


「そんなぁ……そんなこと言われたって、さっきまで触れてたのに……!なんで!やだぁ!」



溢れ出る涙。
翔太は困った顔をした。

自分もショックだった。
止めるすべがなかった。


「とりあえず美咲、ここを出よう。まだ俺のことは見えてるし、ね?お土産、見に行こう?」


無理やり口角を上げ、翔太は笑う。
美咲は小さく頷き会場を出た。


それから2人は沈黙。

お土産コーナーに着くが美咲はあまり商品を見ない。
店内を歩き回りアクセサリーや文房具、ハンカチなどが売ってる棚を見つけた。


「美咲、これ買って」


ふと翔太の指さす先を見ると、カワウソのイラストの描いてあるハンカチだった。


「なんでハンカチ…翔太必要ないでしょ」


「俺、お化けだし買えないから!本当なら美咲にプレゼントしたいやつ!自分で買って!」


「変なの……」


ハンカチを手に取る。
ついでにクラゲの形をしたボールペンも手に取った。


「なんだこれ、使い勝手悪そうなボールペンだな」


「いいの、翔太の墓にお供えするの」


「センスどうなってんだよ!」


翔太は笑う。
美咲もつられて笑った。


商品を購入し、外へ出た。