カーテンから差し込む朝日と

普段なら朝に聞かない大きな笑い声で目が覚めた。

まだ光になれていない目を擦りながら上体を起こす。


笑い声の方に目をやるとテレビを見ながら爆笑している翔太の姿があった。


翔太は振り向き


「おっ!美咲おはよー!よく寝れたか?」


ヘラヘラと笑いながら頭を撫でてきた。
いつもの眩しい笑顔。

心が温まる。


「おはよー、よく寝た。学校行く準備しなきゃ」


「なぁー美咲よ、今日はサボらねーか?デートしようぜ!デート」


学校サボりかぁ……
この機会だし、一日だけでも許されるよね。

先生やクラスの人たちだって、私が今休んだって仕方ないってなるはず。



「いいよ、デートしよ。どこ行こうか?」



「まじ!決まりー!水族館行きたい!水族館!行こう!早く着替えて!おい!なぁー俺はもう行けるぞ!」


「うるさいわね、女の子の準備舐めないでよ!」



へーい、と軽い返事をし翔太は美咲の周りを歩き回る。
自由自在に透けたり物に触ったり、浮遊したりできるらしい。
翔太自身もそれを楽しんでる様子だった。

顔を洗い、下地兼用日焼け止め、ファンデーションを塗りパウダーをする。
そんな様子を眺めている。

翔太は人差し指で美咲の頬をツンっと触る。

美咲はすごい形相で翔太を睨んだ。


「なぁー美咲、これ必要かー?お前肌綺麗じゃん。」


「いいの、気持ちの問題」


「ふーん」


メイクを終えて、髪を結う。
ブラウスのボタンを止め、茶色いアーガイル柄のスカートを履いた。



「今日はポニーテールっすか姉貴!最高っす!可愛い〜さすが俺の彼女!」


鏡越しに翔太が後ろから抱きついてくるのが分かった。
少し呆れながらも嬉々とする感情は隠せず顔が綻んだ。

準備が終わり外に出ると澄んだ青色をしていた。


風は少し湿度がある。
夏が残っているのだろうか。

近所に住む人々は朝食を取る時間だろう。
水族館はまだ開館しない時間だ。


最寄りのバス停まで歩く。

手を繋いで。


「翔太、あの世ってどんなところなの?」


「あの世?あーなんか人がめっちゃいて全体的に白って感じで……うーん。なんつーかなんだろう、概念?」


「概念?!はははは!翔太って概念の概念知ってるんだ!あはは!」


「分かるだろ!バカにしすぎだろ!美咲!こら!」


翔太は握っていた手をブンブン振り回した。
連動して美咲の手も振り回される。


そんなことをしている間にバス停が見えてきた。

バス停には人が何人か並んでいる。

翔太は他の人から見えない。
なら、翔太と会話している私は変な人だろうか。


そう思い、周りの目を気にしてバスが来るまでは黙り込んでいた。

翔太もそれに気づき飽きないよう、変顔を向けてきた。