「え!美咲、44度で風呂入ってんの?!えぐ!熱くね?」
壁からぬるっと翔太が顔を出した。
「きゃぁあ!!何してんのよ!ばか!」
壁から上半身を出してくる翔太にお湯をかける。
ゲラゲラと笑う翔太。
「ばかは美咲の方だよ!お化けにお湯が効くわけないでしょーべろべろばぁ!覗き放題」
「うざ!さっさと出てけ!変態!」
構わずお湯をかけると翔太は頬を膨らましケチといい出ていった。
別に裸を見られても相手は翔太だし今更……
だけど風呂を覗くのは違う!
わざと足音を大きくしてお風呂場を出た。
着替えて部屋に戻るとベッドに横たわる翔太。
漫画を読んでいた。
「何読んでるの?」
「死ぬ前に美咲んちで中途半端に読んだ漫画。今のうち読んどかないと成仏できねー」
「ったく……」
翔太は漫画を読み続けた。
横に座り頭を撫でる。
翔太は満面の笑みで美咲を見た。
「この巻で終わりなんだけど、なんか微妙だなー読まなくても良かったかもなー」
「人が買ったものにケチつけんな、てかこれ見ようよ」
美咲はアプリでアニメのサイトを開く。
翔太はスマホを覗き込んだ。
「なにこれ、無口な瞳に触れた日?なんのアニメ?」
「今期流行ってるんだけど、異世界恋愛もの、泣けるらしいよ」
「えーいいじゃん見ようぜ」
「まだ完結してないらしい、原作も」
「なんで3日間しかない俺に見せようとすんだよ!成仏できなくなるだろ!」
美咲は爆笑し翔太の背中に転がる。
こうしていると翔太が本当に死んだとは思えなかった。
「じゃあホラー映画見よ」
美咲はスマホをスタンドに立て映画を再生させた。
ピエロが楽しそうに踊ってる映像が流れる。
翔太も体を起こし映画に夢中になった。
「ピエロが子供を惨殺する映画か〜」
映画も中盤。
なんとなく内容が掴めてきた。
美咲が集中して見ていると部屋の電気が急に消えた。
「わっなに?!」
リモコンで明かりをつけようとするもつかない。
「翔太?!」
しかし返事がない。
スマホの明かりが暗い部屋を少し照らしていた。
画面にはピエロが大きな斧を振り回してる映像。
ベッドを見るが姿がない。
「なに!ホントになに!翔太!翔太!」
焦って立ち上がろうとすると机に足をぶつけた。
「いったぁー!」
悶絶していると部屋の明かりがつく。
目の前には心配そうにする翔太。
美咲の肩に手をかけ顔を覗き込む。
「ごめんやり過ぎた。大丈夫か?」
「やっぱあんたの仕業ね……絶対許さないんだから!」
目に涙を浮かべ翔太を叩く。
痛いし怖かったし最悪。
「本当にごめん。怪我してないか?」
「ちょっとぶつけただけ。おばけ特有のイタズラとかしなくていいから……」
美咲はふてくされ布団に入った。
翔太は美咲の横に座り髪を撫でる。
翔太の匂い。
懐かしい匂い。
安心する。
少し怒ったのに、変わらず優しく撫でてくれる手。
愛情が伝わる。
そのまま美咲は眠りについた。

