夕焼けが差し込む教室。
美咲と翔太の2人きり。
そこへ入ってきたのは担任だった。
「あら!美咲ちゃんまだいたのね、まぁ……仕方ないわ。でももうすぐ暗くなるから早めに帰りなさいね」
担任は翔太の机の横にいる美咲を見て出ていった。
あれ?
他の人には翔太は見えていない?
「まぁ、いわゆるお化けってやつだし?俺」
翔太は不思議そうにしてる美咲を見て答える。
夏が終わって秋に入るこの時期は暗くなるにつれて
肌寒くなった。
思ったよりも日が落ちるスピードが早くなり、夕日は半分に見えた。
「美咲、もう帰ろうぜ。帰っても俺が消えるわけじゃねーし。せっかくならお家デートってやつ楽しもうぜ!」
親指を立て二カっと笑う。
つられて美咲も笑った。
「そうだね、1日目がお家デート最高!早く帰ろ!」
そうして2人は教室を出た。
中途半端に明るい空。
鈴虫の鳴く声が聞こえる。
外の匂いは秋の訪れを感じさせた。
「ここの建設中の建物、ラーメン屋できるらしいよ」
「え!まじ?うわぁーいつ予定?生きてたら俺も行きたかったわ〜!あとで行ったら仏壇に向かって教えてよ!」
ケラケラと笑いながら翔太は言う。
美咲は少し悲しそうな顔をした。
翔太はハッとし美咲の左手を握った。
「ごめんな、冗談面白くないよな。今はこうして会えてるけど本当はいないようなもんだしな」
手を握り返し美咲は首を横に振った。
「いや、いいのよ。ただ、現実を突きつけられて……ここの道だって……あの分かれ道で私が……」
「おいおい、そんな後悔させるために俺こっち戻ってきたんじゃねーよ?相変わらず泣き虫だなーお前」
「翔太のばか」
「バカでゲッコーコケコッコーだっつーの」
「今日は……寒いね」
「おい!それ俺の言葉に対してだろ!ったく美咲は!」
美咲は笑顔に戻り、ありがとうと呟く。
翔太には聞こえなかったようだ。
しばらく道を歩き美咲の家に着く。
既に夕日は沈んでいた。
家に入ると、両親は好都合にも不在だった。
翔太は一礼をして玄関へ上がる。
「3日間お邪魔させて頂きます……お義母様、お義父様……」
「なーに言ってんの。私の部屋分かるよね?お風呂入ってくるから待ってて。」
美咲は風呂場へ小走りで向かった。
翔太が戻ってきた。
3日間だけ。
大好きで愛していた人。
もう一度会えたら、なんと願ったことか。
湯船に浸かり体を温める。
足先から心臓が一気に熱くなった。
生きている実感が湧いてくる。
翔太……
大学生になったら温泉旅行とかも行きたかったのに……

