美咲は顔を上げ、周りを見渡す。
教室はもう静まり返っていた。

夕日が教室を照らしている。


「美咲、おはよ」


どこからともなく翔太は現れ、美咲に笑顔を向けた。
翔太の体からは白いモヤのようなものが出ている。

「いやー起きちゃったか!みんな起こさないようにしてたんだぜ!先生までもな!はは!」


「いやぁーだって美咲、寝ながら泣いてんだもん起こしにくいわな!」


「てか寝て正解だろ!成長期は寝てなんぼ!」


「翔太」


「ん?」


「なにそのモヤ。」


「あーこれ?これはなーもう時間ってことだな!」


翔太の足も手も顔も胴体も既に白いモヤで消えかかっていた。
美咲は大きな音を立て椅子から立ち上がる。


「いやだ……お願い……行かないで」


溢れ出る涙。
翔太は笑っている。


「また会えて嬉しかったぜ!俺は。やっぱ美咲は泣き虫だなー!ちゃんとあげたハンカチで涙拭けよ!」


「無理!本当に!なんで……もうそんな時間なの?お願い」


「お願いって言われてもなー神様?との約束だしな仕方ないよなー」


「なんでそんな……!」


美咲は消えていく翔太を見守ることしかできない。


「そういえば美咲、屋上で言いかけてたことなんだけど」


涙で前が見えにくい。
翔太の真剣な声。

美咲は消えかかる翔太を見つめる。

翔太の目には涙が浮かんでいた。


「美咲、大好きだよ。」


「幸せになってな。美咲が幸せになるまで、俺近くで見守るからさ!」


翔太は笑顔を残し消えていった。