蒼依くんのことを考えていると、あっという間に待ちに待った日がやってきた。


「あーちゃん!早く行こー!」



「はいはい、わかったから(笑)そんなに蒼依くんに会いたいのー?」


ニヤニヤしながら私の顔を覗き込むあーちゃんに、思わず俯いてしまう。



「もー!美優は可愛いんだから!」


そうからかいながら腕を回してくれるあーちゃんの優しさに、胸がじんわり温かくなる。


お店に到着すると、キラキラと輝くフロアの中に、ずっと会いたかった蒼依くんの姿があった。


私に気づいた瞬間、蒼依くんは満面の笑みで駆け寄ってくる。



「会いに来てくれたの!美優ちゃん!めちゃくちゃ嬉しい」


弾けるような笑顔に、私は思わず目をそらしてしまった。



「ねえねえ、こっち見てよ」


そう言って、私の頬にそっと手を添える蒼依くんの手の大きさに、胸の奥がドキドキと騒ぎ出す。



「イチャイチャしないでくださーい!」


あーちゃんがニヤニヤしながらツッコミを入れる。



「そ、そんなことないよ!恥ずかしいよー」


顔がみるみる赤くなるのが自分でも分かった。



「美優ちゃん、可愛いね。本当に」


その優しい声と笑顔に、私の心は完全に奪われていた。



「今日は私も蒼依くんの売上に貢献するね」


そう言ってメニュー表を手に取り、350万円の高級シャンパンを下ろす決意をする。


フロアがざわつき、蒼依くんの笑顔を間近で見られる喜びに胸がいっぱいになる。



「ええっ!ありがとう!美優ちゃん!嬉しい!」


蒼依くんは私の手を握り、目を真っ直ぐに見つめてくる。その瞳に、世界が輝いて見えた。


シャンパンコールの声がフロアに鳴り響き、蒼依くんは別の席へ移動する。



「美優ちゃん、待っててね」



「う、うん!」


コールが終わり、女の子がマイクを握る。



「今日、蒼依くんとアフター行くのは私なので、被りの姫は全員帰ってください!よいしょー!」


突然の出来事に頭が追いつかない中、あーちゃんがそっと説明してくれた。



「今のがマイクってやつだよ。シャンパンの後に話せるんだ。今日は締め日で皆のナンバーが決まるから、バチバチなんだよね。蒼依くん、人気だから大変なんだよ」


初めての経験に心がざわざわする。どうしたらいいのか分からない。



「今日も尖ってるねー、結ちゃん(笑)いつもありがとう!よいしょ!」


普段は私だけに向けられている笑顔が、他の姫にも向けられている現実に、胸がぎゅっと締め付けられた。