宇宙の辺境宙域。連邦の航路から外れた座標に、静かに浮かぶ小惑星基地があった。

そこが〈エクリプス〉――ニュータイプのみで構成された独立勢力の拠点だった。

アヤとレイは、カレンの残した座標を頼りに、〈RX-Λ〉でその基地にたどり着いた。迎えに現れたのは、黒いスーツに身を包んだ青年――シオン・グレイ。〈エクリプス〉の指導者であり、かつて連邦のニュータイプ研究機関に所属していた人物だった。

「君たちの共鳴は、もはや“兵器”ではない。これは、進化だ」

シオンはふたりを歓迎し、〈エクリプス〉の理念を語る。

「ニュータイプは、戦うために生まれたのではない。心で繋がり、争いを終わらせるために存在する。だが、連邦はその力を恐れ、利用しようとしている」

アヤはその言葉に共鳴しながらも、どこか違和感を覚えていた。

「でも……あなたたちは、武装している。戦わずに、守れるの?」

シオンは静かに微笑む。

「理想を語るだけでは、世界は変わらない。だからこそ、我々は“選ばれた者”だけで未来を築く」

その言葉に、レイの表情が曇る。

「選ばれた者……?」

〈エクリプス〉の内部には、共鳴能力の強さによって階級が分けられていた。アヤとレイは“最上位共鳴者”として特別扱いされるが、他のメンバーとの間には明確な壁があった。

ある夜、アヤは基地の中庭で、年若いニュータイプの少女・ミラと出会う。

「私、共鳴が弱いから……戦えない。だから、ここでは“役立たず”って言われるの」

アヤはその言葉に胸を痛める。

「そんなことない。心が繋がる力に、強いも弱いもないはず」

その想いは、レイにも届いていた。

「俺たちの力が、誰かを傷つけるなら……それは、進化じゃない」

ふたりは、〈エクリプス〉の理想と現実のギャップに直面する。

そして、シオンからある提案がなされる。

「君たちの共鳴は、〈RX-Λ〉を超えて空間そのものに干渉できる。次の作戦で、その力を試してほしい。連邦の通信衛星網を“沈黙”させるんだ」

それは、戦争の均衡を崩す危険な作戦だった。

アヤとレイは、選択を迫られる。

守るために戦うのか。繋がるために拒むのか。

ふたりの心は、静かに揺れていた。