出撃準備が進む格納庫。〈RX-Λ〉の機体は、静かに光を放っていた。

副操縦席に座るアヤの手は震えていた。軍用スーツの袖口を握りしめ、深呼吸を繰り返す。隣にはレイ。彼はいつも通り無表情だったが、アヤの手にそっと触れた。

「怖いなら、無理しなくていい」

「……怖い。でも、あなたがいるなら、私は飛べる」

ふたりは視線を交わす。言葉よりも先に、心が重なっていた。

出撃命令が下る。〈RX-Λ〉が発進する。宇宙の闇を切り裂く白銀の軌道。今回の任務は、反連邦勢力の補給艦隊の迎撃。敵は数で勝るが、機体性能では劣る。

戦闘が始まる。

レイの操縦は正確だった。だが、敵の数が多く、次第に包囲されていく。アヤは副操縦席から、レイの意識に触れようとする。

「レイ、右旋回。敵が三機、軌道を合わせてる」

『……見えてる。君の声が、俺の目になる』

ふたりの意識が融合する。〈RX-Λ〉の反応速度が跳ね上がり、機体がまるで“生きている”かのように動き始める。

敵機を次々に撃破していく。だが、最後の一機が、補給艦を盾にして逃げようとする。

「撃てば、民間人が……!」

レイの手が止まる。アヤの心が震える。

『君は、どうしたい?』

『……守りたい。誰も、失いたくない』

その瞬間、〈RX-Λ〉の機体が赤く輝く。粒子が機体を包み、敵機の動きを封じるように干渉する。まるで、ふたりの“想い”が空間そのものに影響を与えているかのようだった。

敵機は降伏。補給艦も無事だった。

帰還後、艦内は騒然としていた。

「共鳴粒子が……空間干渉を起こした?」

「ニュータイプ同士の融合が、機体性能を超えた……!」

だが、アヤは静かに涙を流していた。

「……誰かを守るって、こんなに苦しいの?」

レイは彼女の肩に手を置いた。

「それでも、君は守った。俺は……君のその涙に、救われた」

ふたりの絆は、戦場で確かに深まっていた。

それは、星屑のように儚く、でも確かに輝いていた。