コロニー〈リュミエール〉の空に、巨大な艦影が現れた。

連邦軍試験部隊〈ノクターン〉――その艦〈アステリオン〉は、静かに港湾ドックへ接岸する。白銀の船体に刻まれた部隊章は、星屑を模した意匠。だが、その美しさの裏に、最新鋭モビルスーツ〈RX-Λ〉の試験運用という目的が隠されていた。

アヤは、母の仕事の手伝いで医療班に同行し、〈アステリオン〉の内部へ足を踏み入れる。軍艦の空気は冷たく、無機質だった。だが、格納庫に入った瞬間、彼女の胸がざわめいた。

そこにいたのは、夢で見た少年――レイ・アルヴァ。

彼は、〈RX-Λ〉の整備を見守っていた。白いパイロットスーツに身を包み、無表情で機体を見上げている。その姿は、夢の中と同じだった。

「……君、昨日の夢に出てきた」

思わず漏れたアヤの言葉に、レイはゆっくり振り向いた。

「俺も……君の声を聞いた。眠っているはずなのに、心が騒いでいた」

ふたりの視線が交差した瞬間、格納庫の空気が変わった。周囲の音が遠ざかり、まるで時間が止まったかのような感覚。ニュータイプ同士の共鳴――それは、言葉を超えた“心の音”だった。

その夜、アヤは再び夢を見る。

今度は、〈RX-Λ〉のコックピットに座るレイの姿。彼の背後には、赤い光の渦が広がっていた。そして、彼の声が響く。

「君がいるなら、俺は戦える」

目覚めたアヤは、胸の奥に残るその言葉に、涙を流した。

翌朝、〈ノクターン〉の隊長・カレン・ヴァルツがアヤに接触する。彼女は、アヤのニュータイプとしての資質に気づいていた。

「君のような感受性は、戦場では武器になる。だが、それ以上に――希望にもなり得る」

アヤは迷う。戦うことが、誰かを守ることになるのか。レイの孤独に触れた彼女は、答えを探し始める。

そして、〈RX-Λ〉が初めて戦場へ向かう日が近づいていた。