〈エクリプス〉の基地にて、アヤとレイは〈RX-Λ〉の定期メンテナンスに立ち会っていた。

整備班が機体の中枢ユニットに触れた瞬間、異常な粒子反応が発生する。機体が微かに震え、コックピットのモニターが自動起動した。

「これは……記録ユニットが自律起動してる?」

技術主任が驚く中、アヤとレイは機体に乗り込む。すると、モニターに映し出されたのは、過去の戦場の記録だった。

だが、それはただの映像ではなかった。

音声も映像も、ふたりの意識に直接“語りかけて”くる。

『この機体は、ニュータイプの“記憶”を蓄積する。過去に乗った者たちの想いが、粒子に刻まれている』

最初に現れたのは、宇宙世紀0142年の記録。若き女性パイロットが、戦場で仲間を守るために自爆を選んだ瞬間。

『私は、誰かの未来になりたかった。だから、私の“光”を、次の誰かに託す』

次に現れたのは、0148年。少年兵が、敵機の中にかつての友人を見つけ、引き金を引けずに撃墜される記録。

『心が繋がるなら、戦えない。でも、それがニュータイプの本質なら……俺は、それでいい』

アヤは涙を流しながら、レイの手を握る。

「彼らも……私たちと同じだった。誰かを守りたくて、誰かに触れたくて」

レイは静かに頷く。

「この機体は、ただの兵器じゃない。魂の記録だ」

〈RX-Λ〉の粒子が、ふたりの共鳴に反応し、過去の記憶を“歌”として再生する。

それは、言葉ではなく、感情の旋律だった。

基地の外では、〈エクリプス〉の作戦準備が進んでいた。シオンは、ふたりの力を使って連邦の通信網を遮断する計画を進めていた。

だが、アヤとレイは迷っていた。

「私たちの力は、誰かの“声”を受け継いでる。それを、破壊に使っていいの?」

「……俺たちは、選ばれたんじゃない。繋がれたんだ。過去と、未来と」

その夜、ふたりは〈RX-Λ〉のコックピットで静かに座っていた。

星々が窓の外に広がる。

「ねえ、レイ。この機体が“記憶”なら、私たちは……“希望”になれるかな」

「なれるさ。君がいるなら」

ふたりの手が重なり、機体が淡く輝く。

それは、過去の亡霊たちが、ふたりに託した“光”だった。